猫の甲状腺機能亢進症にはロイヤルカナン?治療と食事管理を解説

猫が高齢になると注意が必要なのが、甲状腺ホルモンの異常によって引き起こされる甲状腺機能亢進症です。この病気は代謝が過剰になることで、体重が減る、食欲が増す、よく鳴く、落ち着きがなくなるといった症状が見られます。早期に発見し、適切な治療を行うことが猫の健康を守る鍵となります。

治療の一環として注目されているのが、療法食の活用です。中でもロイヤルカナンの腎臓サポートシリーズは、腎機能への配慮がされており、甲状腺機能亢進症を併発した猫にも選ばれることがあります。ただし、甲状腺ホルモンの材料であるヨウ素制限には特化していないため、病状や併発疾患に応じた使い分けが必要です。

この記事では、猫の甲状腺機能亢進症の症状や診断、併発疾患、そしてロイヤルカナンを含む療法食の比較や注意点などを詳しく解説します。

記事のポイント

1.猫の甲状腺機能亢進症の原因や主な症状
2.診断方法と併発しやすい病気の特徴
3.ロイヤルカナン療法食の種類と選び方の違い
4.療法食を使う際の注意点と切り替えのポイント

猫の甲状腺機能亢進症ロイヤルカナンの基本情報

・猫の甲状腺機能亢進症とは内分泌系の病気
・主な症状は体重減少や多食・多飲など
・発症しやすいのは10歳以上の高齢猫
・診断にはT4やfT4などの血液検査を使用
・併発しやすい病気は腎臓病や高血圧症
・早期発見には日常的な観察と定期検査が重要

甲状腺機能亢進症とはどんな病気?

猫の甲状腺機能亢進症とは、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される内分泌疾患です。新陳代謝が異常に活発になるため、様々な体調変化が現れます。

この病気の多くは、甲状腺にできる良性の腫瘍(腺腫)によって引き起こされます。代謝が上がることで、食欲は増すにもかかわらず体重が減少し、筋肉量も落ちていきます。加えて、落ち着きがなくなったり、頻繁に鳴いたりといった行動の変化も目立つようになります。

特に高齢の猫に多く見られ、10歳以上になるとリスクが高まる傾向です。

ただし、症状が軽度の場合は飼い主が見逃してしまうこともあります。体調に変化を感じたら、早めに動物病院での検査を受けることが大切です。

主な症状と見逃しやすいサイン

猫の甲状腺機能亢進症では、見逃されやすい初期症状があります。典型的なのは、食欲が旺盛なのに体重が減っていくという矛盾した変化です。

その他にも、頻繁に嘔吐する、下痢を繰り返す、やたらと活発になる、夜鳴きが増えるといった変化も見られます。一方で、毛並みがバサバサになったり、水をたくさん飲むようになるなど、一見加齢の影響とも思われがちな症状も含まれます。

これらは病気の進行とともに悪化していくため、日常的な観察が重要です。

注意点としては、元気に見えることが逆に受診の遅れにつながることです。症状が軽くても、10歳を超えた猫には年に1回の定期検査をおすすめします。

発症しやすい猫の特徴と年齢層

猫の甲状腺機能亢進症は、高齢の猫に多く見られる病気です。平均的な発症年齢は12〜13歳とされており、特に10歳を超えると注意が必要になります。

また、統計的にはメス猫の方がやや発症率が高いという傾向もあります。ただし、オス猫でも発症することは十分ありますので、性別に関係なく警戒は必要です。

環境要因や食生活も影響すると言われており、特に魚ベースの缶詰を常食している猫や、アルミ缶を使用したフードを与えられている猫ではリスクが高まる可能性があります。

遺伝的な要素は明確ではないため、年齢や生活環境に注目しながら予防・早期発見に努めることが重要です。

診断に使われる検査項目とは

猫の甲状腺機能亢進症を診断するには、血液検査によるホルモン測定が主な手段です。特に「T4(サイロキシン)」というホルモンの数値を確認することで、異常が判断されます。

加えて、fT4(遊離T4)やSDMAなどの補助的な検査も実施されることがあります。fT4は非甲状腺性の病気の影響を受けにくく、より正確な判断に役立ちます。

さらに、腎機能や肝機能に影響を及ぼすケースもあるため、BUNやクレアチニン、ALT、ALPなどの生化学検査も同時に行うのが一般的です。

これにより、併発する腎疾患などの早期発見にもつながります。定期的な血液検査が、健康管理の大きなカギとなります。

併発しやすい病気と注意点

甲状腺機能亢進症の猫は、他の病気を併発するリスクが高い点に注意が必要です。特に慢性腎臓病や高血圧症、心臓病が代表的です。

この病気によって血流や代謝が変化し、一見腎臓が健康に見えることがありますが、治療により甲状腺ホルモンの数値が下がると隠れていた腎疾患が表面化するケースが少なくありません。

また、高血圧が進行すると網膜剥離や突然の失明を引き起こす可能性もあります。

そのため、治療を始めた後も定期的な血液検査や血圧測定、腎機能の評価が欠かせません。数字だけに頼らず、体重や食欲の変化にも気を配ることが大切です。

早期発見のために飼い主ができること

飼い主が日頃から愛猫の様子を観察することで、甲状腺機能亢進症の早期発見につなげることができます。体重が減ってきた、食欲が異常にある、よく鳴くようになった、毛並みが悪くなったといった変化に気付くことが第一歩です。

特に10歳以上の猫で、元気なのに痩せてくるような場合には、迷わず動物病院を受診してください。

また、年に1回は血液検査を受ける習慣を持つことで、数値からの早期発見が可能になります。

加齢による変化と見過ごされがちですが、病気の兆候である可能性を常に考慮しましょう。些細な異変でも遠慮せず、獣医師に相談する姿勢が大切です。

猫の甲状腺機能亢進症ロイヤルカナンの療法食

・ロイヤルカナン療法食は複数の種類がある
・腎臓サポートと甲状腺用フードは目的が異なる
・ロイヤルカナン使用時はおやつや併用食に注意
・食事療法だけで効果が出ないケースもある
・他社の療法食やサプリも選択肢として検討可能
・フードの切り替えは徐々に行うのが基本

ロイヤルカナン療法食の種類と違い

ロイヤルカナンでは、猫の健康状態に合わせた複数の療法食が提供されています。甲状腺機能亢進症の猫に向いている製品としては、特に「腎臓サポート」シリーズが注目されています。

このシリーズには「腎臓サポート」「腎臓サポートスペシャル」「腎臓サポートセレクション」などがあり、嗜好性や食感の違いにより、食べやすさに配慮されています。どれも腎臓への負担を軽減する栄養設計がされている点は共通しています。

ただし、ロイヤルカナンには甲状腺ホルモンの材料であるヨウ素を制限したフードは用意されていません。そのため、ヨウ素制限が必要な場合は、ヒルズの「y/d」など他社製品を選ぶ必要があります。

目的や症状に応じて、どのタイプが最適かを獣医師と相談して選びましょう。

腎臓サポートと甲状腺用フードの比較

腎臓サポートフードと甲状腺用フードは、それぞれ異なる目的に基づいて設計されています。甲状腺機能亢進症と慢性腎臓病を併発している猫にとって、どちらを優先すべきかは悩ましい問題です。

腎臓病が進行している場合は、腎臓ケアを優先するのが一般的です。腎臓サポートフードはタンパク質やリンを制限し、腎機能の悪化を防ぐよう作られています。

一方、甲状腺用フードはヨウ素の含有量を厳密に制限することで、ホルモンの過剰分泌を抑える効果が期待できます。ただし、腎臓病への配慮は限定的です。

そのため、両者を混ぜて与えるのは避けるべきです。判断に迷った場合は、症状の重いほうを優先し、食べっぷりや体重変化を見ながら調整するのが現実的です。

ロイヤルカナンを使う際の注意点

ロイヤルカナンの療法食を使用する際には、いくつかの注意点があります。まず重要なのは、他のフードやおやつを併用しないことです。特に甲状腺機能亢進症の管理中にヨウ素を含む食品を摂ると、治療の妨げになる可能性があります。

また、ロイヤルカナンの腎臓サポートシリーズは甲状腺に特化した設計ではないため、ヨウ素量は制限されていません。甲状腺ホルモンのコントロールには薬の併用が前提となります。

さらに、嗜好性が合わず猫が食べない場合は、無理に続けず獣医師と相談してください。フードの種類は豊富に用意されていますが、個体差により合わないケースもあります。

療法食は医師の指導のもと、正しく使うことが効果的な治療につながります。

食事だけでの治療が難しいケース

猫の甲状腺機能亢進症は、食事療法だけでコントロールできるとは限りません。症状の重い猫や、病気の進行度によっては、薬物療法や他の治療を組み合わせる必要があります。

例えば、ヨウ素制限食を続けても甲状腺ホルモンの値が下がらない場合や、フードをまったく受け付けない猫には、食事だけでは改善が見込めません。また、腎臓病を併発している場合は、甲状腺用のフードがかえってリスクとなることもあります。

このような場合は、メルカゾールなどの抗甲状腺薬を併用したり、必要に応じて漢方療法や外科手術を検討することになります。

症状や体調に応じた柔軟な対応が求められますので、定期的な検査と獣医師との相談を忘れないようにしましょう。

ロイヤルカナン以外の療法食の選択肢

甲状腺機能亢進症の食事療法には、ロイヤルカナン以外にも選択肢があります。特にヒルズの「プリスクリプション・ダイエット y/d」は、ヨウ素を厳密に制限した数少ないキャットフードとして知られています。

このフードは、甲状腺ホルモンの合成を抑えるために開発されており、薬を使わずにコントロールを目指すケースにも利用されます。ただし、腎臓への配慮は限定的であるため、慢性腎疾患を併発している猫には不向きな場合もあります。

また、国内外のサプリメントや漢方療法を補助的に使うことも検討されます。L-カルニチンやモエギタブなどは、症状の緩和や代謝サポートとして注目されています。

療法食の選択は病状と生活環境に応じて変わりますので、専門的な助言を受けることが大切です。

フードを切り替える時のポイント

フードを新しい療法食に切り替える際は、急に変更せず、少しずつ慣らしていくことが基本です。猫は環境や味の変化に敏感なため、突然の切り替えは食欲不振やストレスの原因になります。

まずは、これまでのフードに少量の新しいフードを混ぜて与え、徐々に比率を増やしていく方法が推奨されます。期間としては、7~10日ほどかけて移行するのが理想的です。

また、療法食は開封後の鮮度も重要です。特にドライフードは空気に触れると風味が落ち、食いつきが悪くなる傾向があります。

嗜好性に問題がある場合は、同シリーズのパウチタイプや缶詰を試すのも一つの方法です。無理に食べさせるのではなく、猫の好みに合わせた工夫を重ねましょう。

猫の甲状腺機能亢進症とロイヤルカナン療法食の要点まとめ

  • 甲状腺機能亢進症は猫に多い内分泌疾患である
  • 主な症状は体重減少、多食、多飲、活動性の増加などである
  • 高齢猫に多く、特に10歳以上は注意が必要である
  • 診断にはT4やfT4などの血液検査が使われる
  • 腎臓病や高血圧などの併発が多く見られる
  • 日常的な観察と年1回の血液検査が早期発見につながる
  • ロイヤルカナンには腎臓サポート系の療法食が複数ある
  • 甲状腺用のフードはロイヤルカナンには存在しない
  • ヨウ素制限が必要な場合は他社製品の利用が必要となる
  • 腎臓病を優先すべき場合は腎臓サポートを選ぶべきである
  • 療法食と他の食べ物を併用すると治療効果が低下する
  • フードの切り替えは徐々に進めてストレスを減らすべきである
  • 薬だけではなく、療法食の選択も治療に影響する
  • 食事療法のみでコントロールできない猫も存在する
  • 食べっぷりや体重変化を見ながら療法食を継続すべきである
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