
ペットフードの販売を始めるにあたって、どのような手続きが必要なのか不安に感じる方は多いのではないでしょうか。特に、製造や輸入を伴う場合には「届出」が必要であることを知らないと、後にトラブルにつながる可能性があります。
ペットフード販売には許可は不要ですが、販売用に自ら製造を行ったり、海外から商品を輸入する場合には、事業開始前に所定の届出を行わなければなりません。届出には事業者の情報や製造場所、製造対象となる動物の種類など、複数の項目を正確に記載する必要があります。
また、製造や輸入を行う場合には帳簿の記録や保存も義務づけられており、パッケージ表示にも細かなルールがあります。違反した場合の罰則も定められているため、しっかりと法律を理解した上で事業を進めることが求められます。
この記事では、ペットフードの製造基準や成分規格、表示義務なども含めて、販売に必要な届出のポイントを詳しく解説していきます。
1、ペットフードの販売に届出が必要なケースと不要なケースの違い
2、製造業者・輸入業者としての具体的な届出手続きと注意点
3、製造基準や成分規格、パッケージ表示のルール
4、違反時の罰則や帳簿管理の義務内容
目次
ペットフードの販売 届出の基本と必要手続き
ペットフード販売に許可は必要?
ペットフードを販売するために、特別な「許可」は必要ありません。これはペットフード安全法において、販売行為そのものには許可制度が設けられていないためです。そのため、販売のみを行う場合、届出も義務も原則として課されません。
しかし、注意しなければならないのは、ペットフードを「製造」または「輸入」して販売する場合です。製造業者または輸入業者となると、事前に届出を行い、帳簿を備え付ける義務があります。この点を誤解してしまうと、無届のまま販売してしまい、法令違反となる可能性もあります。
したがって、自分が販売のみを行うのか、それとも製造や輸入を伴うのかを明確にした上で、必要な手続きを見極めておくことが重要です。特に手作りフードや個人輸入を考えている方は、製造業者・輸入業者に該当するかをしっかり確認しておきましょう。
製造業者・輸入業者の定義と対象
製造業者や輸入業者の定義は、思っている以上に広いことがあります。まず、製造業者とは、自ら原材料を用いて加工し、販売用に包装する人だけでなく、他社が製造したペットフードを混合・小分け・再包装する人も含まれます。つまり、オリジナル商品を作らなくても、袋詰めし直す作業などがあれば製造業者として扱われるのです。
輸入業者も同様で、単に海外から製品を取り寄せて販売するだけであっても、「販売目的」であれば届出が必要になります。さらに、法人でなく個人であっても、業として行う以上は届出の義務があります。
このように、製造や輸入に関しては「どこまでが対象か」の線引きが分かりにくいため、自分のビジネスモデルが該当するかを事前に確認することが大切です。万が一にも届出を怠ってしまうと、後に法令違反とされる恐れがあります。
届出が必要なタイミングとは
ペットフード製造業や輸入業を始める際には、事業開始の「前」に届出を済ませる必要があります。つまり、商品を製造・輸入してから手続きをするのでは遅く、事前に準備しておかなければなりません。これはペットフード安全法第9条に明記されており、販売を始める前の届出が義務となっているからです。
また、届出内容に変更があった場合にも注意が必要です。例えば、事業所の移転、代表者の変更、事業の廃止などがあった場合には、変更から30日以内に再届出が求められます。
うっかり見落としてしまうと、法的なリスクを抱えることになります。届出はインターネットでも申請が可能なため、早めに準備を進めることでスムーズに事業を開始できるでしょう。これにより、ペットフードの製造・輸入が法的に整った形で進められます。
届出書に記載すべき情報一覧
届出書には、具体的で詳細な情報を記載しなければなりません。主な記載事項は以下のとおりです。
・事業者の氏名または名称、住所
・製造を行う事業場の名称と所在地(製造業者の場合)
・販売業務や保管施設の所在地
・ペットフードが使用される動物の種類(犬・猫)
・製造または輸入の開始予定年月日
・輸出用であるかどうかの明示
これらの情報を正確に記載し、地方農政局などの管轄機関に届け出ます。記載ミスや抜け漏れがあると、再提出が必要になる場合もあるため、内容は慎重に確認することが求められます。
特に法人の場合、代表者の氏名や主たる事務所の情報も必要になりますので、社内でしっかり連携して書類を整えましょう。準備に時間がかかることもあるため、余裕を持って取り組むことが大切です。
届出の提出先と提出方法
届出の提出先は、事業者の主たる事務所が所在する地域を管轄する「地方農政局」です。例えば、北海道に本社がある場合は北海道農政事務所が窓口となります。事業所の所在地ではなく、あくまで「本社所在地」で決まる点には注意が必要です。
提出方法は、郵送・メール・オンラインのいずれかから選べます。特に、農林水産省が提供している「共通申請サービス(eMAFF)」を活用すれば、オンラインで手続きが完結するため非常に便利です。電子申請に慣れていない方でも、入力ガイドやヘルプが充実しているので安心して利用できます。
ただし、書類に不備があると差し戻しになる場合があります。記入漏れや誤字、日付の整合性なども細かく確認し、可能であれば提出前に第三者のチェックを受けるとよいでしょう。
届出後に必要な帳簿の記録内容
届出が完了した後、ペットフードの製造業者や輸入業者には「帳簿の記録と保管」が義務づけられます。この帳簿には、製造や輸入の具体的な内容を記載し、2年間保存する必要があります。
製造業者の場合は、製造年月日、原材料の名称と数量、原材料の仕入先と仕入日などを記録します。輸入業者であれば、輸入日、輸入先国、輸入業者名、荷姿、製造国名などを詳細に記載します。また、他の業者へ譲渡した場合も、その相手先の情報と譲渡日、数量などを帳簿に残しておくことが求められます。
帳簿の形式に決まりはなく、手書きでもデジタル管理でも構いません。ただし、記載事項が漏れないように注意し、必要に応じてすぐに提出できる状態で保管しておきましょう。万が一の立ち入り調査や問い合わせに備えることが、事業の信頼性にもつながります。
ペットフードの販売 届出と法令遵守のポイント
ペットフード安全法の概要
ペットフード安全法は、犬や猫の健康を守るために制定された法律で、正式には「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」といいます。2009年6月に施行され、農林水産省と環境省が共同で管轄しています。
この法律の目的は、愛がん動物用飼料の製造や輸入、販売に関する基準や規格を定め、ペットの健康被害を未然に防ぐことです。対象となる動物は犬と猫のみで、鳥や爬虫類などはこの法律の適用外です。
特に注目すべき点は、製造方法や成分に関する厳格な基準、製造業者・輸入業者の届出義務、帳簿の備え付け義務など、複数のルールが定められていることです。ペットフードを取り扱う事業者は、この法律を正確に理解し、遵守することが求められます。
製造基準や成分規格とは
ペットフード安全法に基づき、製造時に守らなければならない基準と、含有成分の上限が定められています。これは、ペットの健康を損なうリスクを軽減するための重要なルールです。
製造基準では、有害物質や病原微生物に汚染された原材料は使用禁止とされており、加熱や乾燥処理によって微生物を除去する工程も求められます。また、猫用フードにはプロピレングリコールの使用が禁止されています。
成分規格には、亜硝酸ナトリウム、エトキシキン、鉛、アフラトキシンB1などの上限値が具体的に示されており、これを超える製品は製造・販売ができません。含有量は、水分を10%に調整した状態で計測する必要があるため、検査手法も法律に基づいて行うことが求められます。
基準に違反すれば、罰則や製品の回収命令が下される可能性もあるため、十分な知識と管理体制が必要です。
パッケージに必要な表示項目
ペットフードを販売する際には、パッケージにいくつかの表示項目を記載する義務があります。これらの項目は、消費者が正しく商品を選び、安全に使用できるようにするために定められています。
具体的には、以下の5つが必須項目です。
-
ペットフードの名称(犬用または猫用の区別を含む)
-
原材料名(添加物を含めて全て表示)
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賞味期限
-
事業者の名称と住所
-
原産国名(最終加工された国を記載)
表示の順序について法的な規定はありませんが、原材料は使用量の多い順に記載するのが望ましいとされています。また、添加物については名称だけでなく用途(例:保存料、着色料など)も一緒に書く必要があります。
誤表示や不適切な表示は、消費者とのトラブルにつながるだけでなく、行政からの指導や回収命令の対象になる可能性もあります。特にオンライン販売では画像を通して確認されるため、パッケージの記載内容は慎重に設計することが求められます。
違反した場合の罰則について
ペットフード安全法に違反すると、罰則が科される可能性があります。販売者自身が悪意なく違反していた場合でも、法律違反には変わりなく、注意が必要です。
例えば、製造や輸入に際して届出を行っていない場合や、帳簿の記載・保存を怠った場合などは、最大で「1年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」が課されることがあります(法第18条)。また、虚偽の届け出を行った場合には10万円〜30万円の過料の対象にもなります。
さらに、基準や規格に合わないペットフードを製造・販売した場合は、製品の回収命令や廃棄命令を受ける可能性もあります。これらの行政処分を受けた事実は、今後の事業継続にも大きな影響を及ぼします。
このようなリスクを回避するためにも、ペットフードの製造・輸入を行う事業者は、常に法令に基づいた管理体制を構築しておく必要があります。
業界の自主基準とガイドライン
ペットフードの販売においては、法令に加えて業界団体が定めた自主基準やガイドラインも重要です。これらは法的強制力こそありませんが、業界全体の信頼性や安全性を保つために、多くの企業が遵守しています。
代表的なものに、「ペットフードの表示に関する公正競争規約」があります。これは、景品表示法に基づき消費者庁と公正取引委員会の認定を受けた表示ルールです。具体的には、給与方法、内容量、目的別分類(例:総合栄養食、おやつ等)、成分表示なども推奨項目として定められています。
また、「一般社団法人ペットフード協会」が定めた製造ガイドラインや、「日本ペット用品工業会」の統一表示ガイドラインも、業界の標準的な基準として活用されています。
法令を守るだけではなく、これらの自主基準も参考にすることで、消費者の信頼を得やすくなり、商品クレームや誤解を未然に防ぐ効果も期待できます。
サプリメント販売時の注意点
ペット用サプリメントの販売は、ペットフード安全法の対象になる場合があります。特に、動物用医薬品に該当しない栄養補助食品として販売されるものは、「栄養に供することを目的とした物」としてペットフードとみなされる可能性があります。
ここで注意すべきは「効能・効果」をうたう表示です。例えば「関節痛に効く」「皮膚病を治す」など、医薬品的な表現をパッケージや広告で用いた場合、薬機法に違反する恐れがあります。これにより、医薬品としての承認を得ていない商品が違法販売と見なされるケースがあるのです。
したがって、サプリメントを販売する際は、「健康維持」「栄養補給」などの表現にとどめ、医薬品と誤認されるような表記は避けなければなりません。
また、輸入品のサプリメントを扱う場合は、原材料や成分表記が日本の基準に適合しているかも確認が必要です。あくまでも「ペットフードとしての位置づけ」で取り扱うように意識しましょう。
ペットフード 販売 届出に必要な知識と手続きの総まとめ
- ペットフード販売に許可は不要だが製造・輸入には届出が必要
- 製造業者には小分けや再包装のみを行う事業者も含まれる
- 届出は製造・輸入開始の前に行う必要がある
- 届出書には事業者情報や製造拠点、動物の種類などを記載する
- 届出の提出先は本社所在地を管轄する地方農政局である
- 提出方法は郵送・メール・オンライン申請から選べる
- 届出後は帳簿の記録と2年間の保存義務が発生する
- 帳簿には製造・輸入・譲渡に関する詳細を記録する
- ペットフード安全法は犬猫の健康を守るための法律である
- 製造時には有害物質の除去や加熱処理などが求められる
- 成分の上限値を超える製品は製造・販売できない
- パッケージには名称・原材料・賞味期限などの表示が必要
- 法令違反には懲役や罰金、行政処分などの罰則がある
- 業界の公正競争規約やガイドラインも重要な指針となる
- サプリメント販売時は薬機法違反にならないよう表現に注意する