ドッグフードを選ぶ際、「高タンパク=高品質」と考える方も多いかもしれません。しかし、実際にはすべての犬にとって高タンパクな食事が最適とは限りません。高タンパクのドッグフードには、筋肉の維持や嗜好性の高さなどのメリットがある一方で、肝臓や腎臓への負担、リンの過剰摂取、下痢や肥満などのデメリットも指摘されています。
特に、シニア犬や持病のある犬、運動量の少ない犬にとっては注意が必要です。また、最近人気のグレインフリーのドッグフードも、穀物の代わりに豆類や肉類を多く使用することで高タンパクになりやすく、同様のリスクを抱えているケースがあります。
この記事では、ドッグフードに含まれるタンパク質の役割や、質と消化性の違い、体質やライフステージに合わせた適切な選び方まで、デメリットを中心にわかりやすく整理しています。愛犬にとって本当に必要な栄養を見極めるための参考にしてみてください。
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記事のポイント
1.高タンパクドッグフードが犬に与える代表的なデメリット
2.肝臓や腎臓に負担をかける栄養バランスの問題点
3.タンパク質の質や消化性の重要性
4.愛犬の体質やライフステージに合わせた適切な選び方
ドッグフード高タンパクのデメリットとは

肝臓や腎臓に負担がかかる理由
高タンパクのドッグフードは、肝臓や腎臓に不安がある犬にとって大きな負担となる可能性があります。これは、摂取したタンパク質が体内で代謝される過程に関係しています。
タンパク質は、消化されるとアンモニアという有害物質を生み出します。通常は肝臓で無害な尿素に変換され、腎臓を通じて体外に排出されますが、肝機能や腎機能が低下している犬の場合、このプロセスがスムーズに進みません。すると、アンモニアなどの老廃物が体内に蓄積され、体調不良を引き起こす原因となってしまいます。
特に門脈シャントのような先天的な疾患を持つ犬や、慢性腎臓病を抱えるシニア犬では注意が必要です。高タンパクフードを与えることで健康リスクが高まる場合もあるため、事前に獣医師と相談することが重要です。
タンパク質とリンの関係性とは
犬の食事に含まれるタンパク質が多くなると、それに比例してリンの摂取量も増加します。リンは体にとって必要なミネラルの一つですが、過剰になると腎臓に悪影響を及ぼす可能性があります。
多くの高タンパクドッグフードは、肉や魚といった動物性原材料を豊富に使用しています。これらの食材はリンも多く含んでいるため、結果としてリンの摂取量も高くなります。リンは血中でカルシウムと結びつく性質があり、過剰になると結晶化して尿路結石の原因になることもあります。
また、腎臓の機能が低下している犬は、リンをうまく排出できず、体内に蓄積してしまいます。このため、腎臓病の予防や進行抑制を考えるうえで、タンパク質とリンのバランスには特に注意が必要です。
攻撃性が増す可能性に注意
高タンパクの食事は、犬の行動にも影響を与えることがあります。具体的には、攻撃性の増加や落ち着きのなさといった行動変化が報告されています。
これは、体内のアミノ酸バランスの乱れによって、精神安定に関わる神経伝達物質「セロトニン」の生成が阻害されることに関係しています。セロトニンは気分の安定や睡眠の質にも影響を与える成分で、不足すると興奮しやすくなったり、神経質になったりすることがあります。
すべての犬に同じような影響が出るわけではありませんが、食事内容によって行動が変化することがあるという事実は知っておくべきです。特に家庭内で小さなお子さんと一緒に暮らしている場合など、安全面にも気を配る必要があります。
食物繊維不足による下痢のリスク
高タンパクのドッグフードは、肉や魚などのタンパク源に重きを置く反面、食物繊維が不足しがちです。これが原因となって、犬が下痢を起こすことがあります。
特にグレインフリーのフードでは穀物の代わりに豆類が使われることが多く、不溶性食物繊維が中心になります。不溶性繊維は排便を促す働きはあるものの、腸内の善玉菌を増やす水溶性食物繊維とは異なり、腸内環境を整える効果は弱いとされています。
腸内のバランスが乱れると、軟便や下痢だけでなく、免疫力の低下にもつながる可能性があります。便の状態が不安定になった場合は、食物繊維のバランスも見直す必要があるでしょう。日頃から便の状態を観察することも、健康管理のひとつです。
高タンパクによる肥満の危険性
高タンパクのドッグフードは、与え方を誤ると犬の肥満につながる恐れがあります。多くの人が「タンパク質=筋肉の元=太らない」という印象を持っているかもしれませんが、実際はそう単純ではありません。
摂取したタンパク質は、体が必要としない分はエネルギーとして使われ、余剰分は脂肪として蓄積されてしまいます。特に運動量が少ない犬やシニア犬にとっては、高タンパクな食事が過剰なカロリー摂取となり、体重増加の原因になることがあります。
肥満は、関節への負担や心臓病、糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めます。そのため、犬の年齢や運動量をしっかり見極めたうえで、適切な食事量を与えることが大切です。体型チェックや定期的な体重測定も忘れずに行いましょう。
価格が高くコスパが悪い傾向
高タンパクドッグフードは、一般的なドッグフードに比べて価格が高くなる傾向があります。その背景には、肉や魚などの動物性タンパク質を多く使用していることや、原材料の質にこだわっている製品が多いことが挙げられます。
確かに、高品質な原料を使った食事は犬の健康に良い影響を与えることがありますが、家計への負担も無視できません。特に中型犬や大型犬など、一度の食事量が多い犬種では月々のフード代が大きく膨らんでしまうこともあるでしょう。
また、高タンパクだからといってすべての犬にとって最適な選択とは限らないため、「高価なフード=健康に良い」とは言い切れません。コストと効果のバランスを見極めたうえで、無理のない範囲で選ぶことが大切です。
ドッグフード高タンパクのデメリット対策法
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総合栄養食の見極めが重要
どれだけ高タンパクであっても、犬の健康に必要な栄養素がバランスよく含まれていなければ意味がありません。そのため、ドッグフードを選ぶ際には「総合栄養食」としての基準を満たしているかどうかを確認する必要があります。
総合栄養食とは、そのフードと水だけで犬の健康を維持できるよう設計された食事のことです。AAFCOやFEDIAFなど、各国の基準を参考に設計されており、栄養の偏りを防ぐ工夫がされています。
一部の高タンパクフードには、栄養の偏りが見られる場合があります。特定の栄養素が不足していたり、逆に過剰になっていたりすると、体調不良を引き起こす原因になります。ラベルに「総合栄養食」と明記されているか、栄養基準を満たしているかを必ず確認しましょう。
タンパク質の質と消化性を確認
高タンパクなドッグフードを選ぶ際には、「量」だけでなく「質」にも目を向ける必要があります。タンパク質の質とは、アミノ酸のバランスや消化吸収のしやすさなどを指します。
例えば、卵やチーズ、魚などは消化性の高い良質なタンパク源とされています。反対に、加熱処理が不十分な生肉や、大豆などの植物性タンパク質は消化に時間がかかり、腸に負担をかけやすい傾向があります。
また、消化性が低いタンパク質は栄養として活用されにくく、未消化のまま腸内に届くことで、悪玉菌のエサとなり腸内環境の乱れを招くこともあります。フード選びでは「タンパク質〇%」という数字だけでなく、原材料や製造方法もチェックしましょう。
運動量に合わせた量を調整
高タンパクドッグフードを与える際は、犬の運動量を正確に把握することが重要です。というのも、タンパク質は体の修復や筋肉の形成に必要ですが、運動量が少ない犬にとっては過剰になりやすいからです。
例えば、スポーツドッグや作業犬のように日常的に多くの運動をしている犬であれば、筋肉維持やエネルギー源として高タンパク食は効果的に働きます。しかし、室内でゆっくり過ごすことが多い犬や、シニア犬では消費エネルギーが少ないため、余剰分が脂肪に変わってしまうことがあります。
また、季節によって運動量が変動する犬もいます。暑さで散歩時間が短くなる夏場と、活発に動ける冬場とでフードの内容を見直すことも大切です。愛犬の生活スタイルに合わせて、適切なタンパク質量を見極めましょう。
シニア犬や病気の犬は要注意
年齢を重ねたシニア犬や、腎臓・肝臓に疾患のある犬にとって、高タンパクフードは慎重に扱うべき選択肢です。こうした犬たちは、代謝機能が低下しているため、過剰なタンパク質の処理が負担となることがあります。
前述の通り、タンパク質は分解過程でアンモニアを生じ、これを処理するために肝臓と腎臓がフル稼働します。特に慢性腎臓病を抱えている犬では、リンの排出能力も低下しており、血中にリンが蓄積するリスクもあります。
また、門脈シャントや肝不全などを患う犬にとっても、高タンパクは悪化の引き金になりかねません。このような犬には、低タンパクで消化吸収に優れた療法食が推奨されることが多く、安易な高タンパク化は避けるべきです。
高タンパクが合う犬と合わない犬
高タンパクドッグフードが適しているかどうかは、犬の体質やライフステージ、活動量によって異なります。すべての犬にとって「高タンパク=良い食事」ではないということを理解しておきましょう。
例えば、若くて筋肉をつけたい成長期の犬や、運動能力が求められる作業犬、スポーツをしている犬には高タンパク食が効果的に働きます。一方で、腎臓や肝臓に不安がある犬、消化機能が弱い犬、またはシニア期に入った犬には、体に余計な負担をかける可能性があります。
そのため、「高タンパク」という表記だけで選ぶのではなく、愛犬の健康状態や生活環境をよく観察することが大切です。適したフードを見極めることで、健康をより長く維持することができるでしょう。
グレインフリーとの関係性を知る
グレインフリー(穀物不使用)のドッグフードは、タンパク質量が多くなる傾向があります。その理由は、穀物の代わりに豆類や肉を多く使用するためです。結果として、グレインフリーのフード=高タンパクフードになるケースが少なくありません。
グレインフリーは、アレルギー対策として注目される一方で、腎臓や肝臓に負担をかけるというデメリットも持ち合わせています。穀物に含まれる水溶性食物繊維が腸内環境を整える役割を果たすのに対し、豆類の不溶性食物繊維はその働きが弱いため、便の調子が乱れる可能性もあります。
また、FDA(アメリカ食品医薬品局)が一部のグレインフリーフードと心疾患との関連性を調査中であることもあり、選ぶ際には情報の更新に注意を払う必要があります。グレインフリーだから安全という思い込みは避けましょう。
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ドッグフード高タンパクの知られざるデメリット まとめ
- 高タンパク食は肝臓や腎臓に負担をかけやすい
- タンパク質の多さはリンの過剰摂取につながる
- アミノ酸バランスの乱れで攻撃的になる可能性がある
- 食物繊維が不足すると下痢や腸内環境の悪化を招く
- 運動量が少ない犬では肥満を引き起こすリスクがある
- 高品質な原材料を使うためフード価格が高くなりがち
- 栄養バランスを考慮し総合栄養食を選ぶことが重要
- タンパク質の「質」や消化性も必ずチェックするべき
- 季節や運動量に応じてフード内容の見直しが必要
- シニア犬や持病のある犬には向いていないことが多い
- 若く活発な犬には高タンパクが有効に働くこともある
- 犬の体質や生活スタイルによって向き不向きがある
- グレインフリーは高タンパク傾向にあり注意が必要
- 穀物不使用でも消化できるα化処理の理解が必要
- フードの選択には最新の健康リスク情報も参考にすべき
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